2015年01月09日

フランスの新聞社 Charlie Hebdo の襲撃事件について。偉大なマホメット。フランス人の出す本気の凄味について。



今年の17日にフランスの新聞社 Charlie Hebdo 3人の男に襲撃されて、メインスタッフを含む12人が死亡するという事件があった。犯人はイスラム系と推測されているという。


Wikipedia ソースなんだが、この新聞社、いろいろと物議をかもすような記事(というかイラスト)を出して、何度も裁判沙汰になっているらしい。特に問題となっているのが、イスラム教の開祖マホメットを描いたイラストを使ったジョークである。


これが原因で、2011年にも襲撃されているんだが、今度はメインイラストレーター3人が殺害されて、新聞社の存続すら危ぶまれているという。


いくつかマホメットを描いたジョークを見てみたが、何がおもしろいのか、私には全く分からない。どこが笑いどころなのかも、本当に不明。成程、共有する文化が違えば、冗談が通じないという実例を見る思いだ。


世界史上、英雄や偉人や聖人は、何人もいるんだろうが、その中であえて順位を決めるとなれば、

私はマホメットが第一位であると思う。


イエス・キリストは気の毒な方法で処刑されて、生涯を終えた。


孔子様は、「わしは公務員になるんじゃ」と生涯かけて中国全土を旅したが、結局、一時期しか公務員になれなかった、かわいそうなお爺さんだ。(彼の教えが、その後の中国の公務員試験の必須科目になったのは皮肉だ)。


ユリウス・カエサルは部下に惨殺されてしまった。


チンギス・ハーンは多くの軍事的栄光に輝いたが、彼の帝国はその後、ほぼ痕跡を残さずに消滅してしまった。


徳川家康に至っては「戦場から逃げ帰る時に、うんこを漏らした」とか「ふんどしの使い過ぎで黄ばんで汚いとか文句を言うな。はじめから黄色いふんどしを使え、と言った」とかいうエピソードが伝えられている始末だ。


つまり、どの人も、欠点やら汚点があって最後の最後に惨めなことになったり、微妙な展開になったりするんだけど、マホメットは違う。彼は、その生涯を政治的、軍事的、宗教的勝利をおさめて終え、死後は数億人の民から預言者として尊敬され続けている。彼に匹敵する人物は、おそらく一人もいないだろうし、これからも出てこないだろう。私がマホメットの同時代人だったら、間違いなく、本当に神の使徒だと思っただろう。


・・・・という人がマホメットなのだ。読めば読むほど、その巨大さに驚く。


「本当に、こんなチートな人物がいたの?」


という感じだ。つまりは、イスラム教徒でない私から見ても、とてもとても、冗談のネタにはなりそうにない、とてつもなく巨大な人物なのだ。独断と偏見で言うが、おそらくマホメットの冗談イラストを描いた人は「イスラム教の開祖」以上の知識は無いだろうと思う。


で、別の話題。


昔、大学でフランス語を学んでいた。その時の副読本を、講義で読んでいた時に、フランス人の持つ信念、情念の強さに驚いた。

そして、今回の件でも、言論の自由を守る為には、テロには屈しないぞ!という固い決意を書いた記事を読んで感動した。Le Figaro という新聞社の


Quel avenir pour Charlie Hebdo? Les dessinateurs répondent.


という記事。以下引用。


dans ce genre d'évènement, le plus dangereux, le plus insidieux, c'est l'autocensure. Il ne faut pas se dire, “je ne veux pas faire ce dessin-là, parce que…”

(こういう状況では、最も危険で、最も汚いのは、自主規制だ。「こんな絵は欲しくない、なぜなら・・・」なんて言うな。)


ne pas céder à la peur, ne pas reculer, ne pas s'écraser. Se bagarrer pas à pas contre la bêtise et contre la violence. Continuer à faire notre métier.

(恐怖に屈してはいけない。ひるんではいけない。つぶれてはいけない。愚かさと暴力と戦わなければならない。(ジャーナリストとしての)仕事を続けなければならない。)


熱い・・・。

武装した男に銃を向けられたイラストレーターが


arrete tu vas me faire rater mon dessin.

(やめてくれ。デッサン狂うだろ)


とか言っている漫画も熱い。


熱い。熱すぎる。フランスでは、ジャーナリズムはこんなに熱いのか。殺される危険があっても、言論の自由のために戦って見せる。逃げたりしない!俺は、ジャーナリストだ!言論の自由のためには命だって張る!


とっくの昔に捏造がバレている案件で、世間の反応が怖くて怖くて、ビビりにビビって、十数年も謝罪を拒否しつづけてきたという、我が国のチキン新聞社のチキン記者どもに、この態度をみせつけてやってください。ええ。

ついでに言うと、戦時中は、自主的に戦争をあおりまくったくせに、敗戦後には『ボクちん達は、軍部に脅されていたんでしゅ』とか情けない言い訳(ウソ)をして、戦後は、(もう軍部はいなくなって安全なので)ボロクソに戦前の軍部批判をした  あ  の  新聞社です。ええ。


マホメットのイラストはともかく、この記事には素直に感動した。


ちなみに、 Charlie Hebdoの 前身は、hara-kiri(切腹)というのだそうだ。確かに、亡くなられたCharlie Hebdo の記者、イラストレーターは侍だったと言っていいのかもしれない。ジャーナリストの真の生き様を、世界にみせつけてくれた。ご冥福をお祈りします。







posted by ペンギン太郎 at 21:41| Comment(0) | フランス語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月25日

フランスの医師がストライキ中だという。医療機関への支払いを保険会社を通すシステムを医療に導入したら,医師は膨大な書類を書いたのに,お金を払ってもらえないという悲劇もありえるんでないの。改革は全て正しいはずだ,というドグマについて。



という話。


私の第二外国語はフランス語である(第一は言うまでもなく英語)。英語とフランス語はかなりの類似性がある。文法の骨格は概ね同じ。語彙は67割が重複するという。

で,フランス語の文章を,Google 翻訳を使えば,殆んど破綻のない英語の文章が現れる。それをもとにフランス語の語彙をチェックすれば,基本的事項をおさえているだけでフランス語の文章は読めてしまう。


Très Bien ! Merci beaucoup , Google!


で,今回の話題。


Le Parisien というフランスの新聞からなんだが,フランスの開業医(といっていいのか。初期治療をするクリニック)の70-80% が,これから1週間,ストライキで休業中なんだそうだ。理由は医療改革に反対を表明するためだという。


薬剤師にワクチン接種をさせることが嫌だとかいうのもあるんだが,患者の払っていたお金の支払いを le tiers payant  つまりは保険会社に通す支払いにすることが争点らしい。


Ils craignent de crouler sous les tâches administratives, de faire face à des difficultés de paiement, que le tiers payant déresponsabilise les patients avec l'idée qu'aller chez le médecin ne coûte rien...


とあり,はっきりと言えば,医師は,(保険会社への)提出する書類は膨大な量になるのに,保険会社からの支払いは不確実になるかもしれない。やってられるかバカヤロー,ということ。


まあ,保険会社にすれば,支払いを減らせば減らすほど利益になるわけだから,その支払いのプロセスを複雑にして,「ここの項目が抜けているから支払いはしない」「ここのところの説明不十分,支払いはダメ」みたいなことをやるんでしょうなあ。こういうことを書いたら怒られるのかしら。


その結果として,医師は書類を書いても,書いても,書いても書いても書いても書いても,保険会社は,「ダメ」「ダメです」「支払いしません」「支払する理由はない」「説明不十分,やり直し」「もう一回書類提出お願いします」って言われてお金を払ってもらえない,みたいな展開になることが予想できるんだろう。だから反対してるんだね。


20 minutes っていう新聞社の記事もだいたい同じ。


Le tiers payant généralisé pourrait amener une surcharge de travail conséquente pour les médecins au quotidien. ≪Il faudrait un système beaucoup plus simple, nous n'avons pas le temps de faire toutes les démarches [liées au tiers payant généralisé].


とある。やはり,(報われるかどうか分からない)仕事量だけ増えるというのは理不尽だ! と怒っているわけだ。


ここから個人的な意見。

医療機関がストライキをするかどうかの是非は,あえて別にしよう。このフランスの医師の怒りは,私は正当性のあるものだと思う。だってそうだろう。リアルに想像して,お金がもらえないかもしれない煩雑な書類仕事をいきなり押し付けられて,しかもそれが,生活に関わってくる問題になるんだったら,誰だって腹が立つだろう。


一昔前の日本だったら,改革に抵抗する抵抗勢力,既得権益ってことになったのかしら。しかしだ。改革を受け入れよ,と主張する前に,その改革の中身はどうなんだ。

書類仕事に追われる医師は,患者をみれなくなるし,そうなれば不利益を被るのは患者だ。医師は,生活かけての膨大な書類仕事を患者ひとりひとりにやってるから,外来の待ち時間は増えて予約はいっぱいで入らない。患者はみる余裕が全然ないから,診察の質も量も落とさなきゃ。それもこれも,保険会社が支払ってくれるために書類を書かなきゃいけないから。さて,誰が得をする?


暴論かもしれないが,言ってしまおう。改革という言葉に引かれる輩,改革と言われれば驚くほど素直に賛成に回る輩は,ストレートに言って頭が悪いのだ。そして,改革という言葉も,政治家が国民に理不尽なことを押し付けるために使う,魔法の杖になってしまっている。これはフランスだけじゃなく,日本だって同じだ。


これと同じような改革案が,日本でも出たとしよう。誰が得をするのか分からない(というより誰も得しないに決まっている)のに,大賛成する人々も,おそらくかなりの数で,出てくると想像する。理由は改革だから。改革は全て正しい。だから,この改革案も正しいんだ。したがって,改革に反対するのは間違っている。


マーティン・メイリアって人が書いた「ソヴィエトの悲劇」って本の最後の方で,共産主義のドグマがいかの多くの人間の心を酔わせる作用があったか,って書いてるんだけど,改革のドグマもそれとたいして変わらないのかもしれない。というより同じである。中身の検証以前に,素晴らしい,正しいになっちゃうんだもの。


現代の呪文。魔法の言葉。あらゆる理不尽をおしつける正当性をもつ聖なる言葉。

それが,改革。



posted by ペンギン太郎 at 00:21| Comment(0) | フランス語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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