2015年02月24日

幼児期にピーナッツを食べないと、ピーナッツアレルギーになるリスクが上がる。



という話。


New York Times


Feeding Infants Peanut Products Could Prevent Allergies, Study Suggests.


という記事にあった話だ。大手メディアのアンテナ力にはかなわない。これは本当にすごい話。


さかのぼること7年前の2008年に


Early consumption of peanuts in infancy is associated with a low prevalence of

peanut allergy. (J Allergy Clin Immunol. 2008 Nov;122(5):984-91.)


という論文が出た。

ピーナッツアレルギーの危険があるため、幼児期にピーナッツを食べてはいけない!と、英国、オーストラリア、北米のクリニカルガイドラインで推奨されてるけど、それは本当に正しいの?という疑問を述べている。


英国とイスラエルで、ユダヤ系の小児のピーナッツ消費量とピーナッツアレルギーの関係をみた。

イスラエルの8ヶ月から14か月の幼児はピーナッツ蛋白を7.1g を摂取している。

それに対して、英国ではピーナッツ消費量は0gだ。

イスラエルの児童のピーナッツアレルギーの割合は0.17% だ。

それに対して、 英国では、ピーナッツアレルギーの割合は1.85%だった。


つまり、10倍の差がある。つまり、

幼児期にピーナッツを食べないことが、アレルギーの原因なんではないの?

という仮説が成り立つ。これは、観察研究だから結論はでない。だから、介入研究で決着をつけてやろうじゃないか。というわけで、上の論文と同じ著者がやった介入研究、


Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy.


が、New England Journal of Medicine 2015223日号に載った。


研究の概要。


@重度の湿疹か卵アレルギーのどちらかあるいは両方のある4ヶ月から11か月の幼児のうち、明らかなピーナッツアレルギーの無い幼児を選んだ。

Aプリックテスト(皮膚にアレルギー反応が出るかどうかを見る試験)で陰性だった542人と陽性だった98人に分けた。

Bピーナッツを食べさせた層と、食べさせない層に分けて5年間追跡した。


Bamba っていうイスラエルのお菓子があるんだけど、これを食べさせたんだそうだ。これが嫌いな子にはピーナツバターを食べさせたという。Bamba で画像検索してみたが、個人的な感想を言えば、おいしくなさそうだな。


追跡5年後ITT 解析の結果は以下。


[プリックテスト陰性群のピーナッツアレルギーの割合]

ピーナッツを食べさせなかった幼児:13.7%

ピーナッツを食べさせた幼児: 1.9%

(P < 0.001) 


[プリックテスト陽性群のピーナッツアレルギーの割合]

ピーナッツを食べさせなかった幼児:35.3%

ピーナッツを食べさせた幼児: 10.6%

(P = 0.004)


だという。これはすごいな。決定打だと言ってもいいのかもしれない。幼児期にピーナッツを食べないと、ピーナッツアレルギーになるリスクが上がるのだ。


No deaths occurred in the study. There were no significant differences in rates of hospitalization

or serious adverse events between the avoidance group and the consumption group.


というから安全面でも、既にピーナッツアレルギーがある場合を除けば、ピーナッツを幼児に与えるのは、問題なさそう。誤嚥とかの可能性を考えれば、幼児用のお菓子とかバターの形になるのかもしれないけど。


他、IgG4 IgE などの抗体反応等の測定結果とか考察があったが、興味ない人が多いと思うので、省略。


個人的な感想。

ガイドラインが書き変えられるほどのインパクトのある論文というのは、読んでいてわくわくするものだ。興味があるのは、これが、他のアレルギーの誘因となる食品、例えば、卵とか牛乳とかでも当てはまるのかどうか、ということ。幼児期に摂取を避けることで、実はアレルギーの原因になっていた、みたいな。


イントロで


In a single study in humans, researchers attempted to induce primary oral tolerance to egg in infants at high risk for allergy, but the study lacked the power to show efficacy.


とあったから、卵に関してはそういった研究もある模様。調べるのも一興なので、今度調べてみよう。


posted by ペンギン太郎 at 19:03| Comment(0) | 予防医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月06日

イスラエルの会社が心電図Tシャツを開発した。その発想はなかった。



という話。


心臓病の中に急性心筋梗塞というおそろしい病気がある。だが、無治療だと死んでしまうかもしれないが、早期に治療できれば助かる。時間との勝負なわけで、発症から診断、治療までの時間が長ければ長い程、死亡する可能性が高くなる。短ければ短い程、心臓のダメージが少ない状態で助かる。


急性心筋梗塞は、特徴的な心電図を示すので、発症が疑われた段階で、いかに早く心電図をとるかが勝負になる。で、救急隊が心電図をとって、病院に心電図データをネットを通じて送る、といった試みを聞いたことがある。


しかし、世の中には、さらに上に行く発想をする人々がいるものだ。


ロイターニュースのサイトで、

心電図Tシャツの動画 ECG shirt warns wearer of heart problems via smartphoneがあった。


イスラエルのHealthWatch www.personal-healthwatch.com という会社が開発したという。この動画だと、このTシャツ、心電図や血圧、心拍数のデータをスマートフォンに送ることができる。異常があれば、スマートフォンから循環器科医に心電図データが送信され、心臓病に対しての治療までの時間が大幅に短縮できるというのだ。今年の春から商品化されるという。

例えば、このTシャツから得た心電図データや血圧データが、クラウドデータに送信され、常時解析される、というシステムが構築されれば、急性心筋梗塞は、発症の瞬間にほぼ診断が可能になるわけだ。そして、発症した人の携帯電話からのGPSで位置情報を確認し、急性心筋梗塞の治療が可能な近隣の医療機関を検索して選び出す、というシステムと組み合わされれば、発症から治療までのタイムロスはおそろしく減るに違いない。


気になるのが「このTシャツ、洗えるのだろうか」ということだが、洗えるらしい。


The Times of Israel という新聞の記事 

Israeli EVG T-shirt monitors hearts, saves lives.


という記事によれば洗えるwashable と書いてある。あと、どれだけ長持ちするのかも気になるが(5回洗ったらダメになる、じゃあ高すぎるな)、それは書いてなかった。


このTシャツ、急性心筋梗塞といった虚血性心疾患だけでなく、不整脈のモニタにも応用可能である。

不整脈の診断でストレスなのが、その不整脈が本当にあったのかどうか、という証拠である。24時間心電図というのがあるが、つけている24時間以内に不整脈が出なかったら陰性になってしまう。なら、もっと長い期間つけていれば?となるが、日常生活を送る上で、この24時間心電図は不便なのだ。少なくとも1週間つけっぱなしというのは無理だ。

また、植え込み型心電図というのがある。ちっこい電極を皮膚を切開して植えこむのだ。これで24時間、365日モニタできるのだが、なんといっても皮膚を切開して機械を植え込むという手術をするのでハードルが高くなってしまう。

しかも、この2つの心電図の欠点は、病院でとる12誘導心電図と違って、どちらも簡易型で、特定の波形だけしかモニタできない。


これが心電図Tシャツだったら?となる。風呂かプールに入る以外の大半は、我々はずっと服を着ているわけでその間に心電図でモニタできれば、かなり長い時間の心電図データを得ることができる。やることと言えばTシャツを着ているだけだから、ストレスも無い。それで、まれにしかおこらない不整脈でも検出することができる。しかも、このTシャツ、病院でとるのと同じ12誘導の心電図をモニタできるのだ。


この心電図Tシャツはgame changer となる可能性があると思う。


posted by ペンギン太郎 at 20:23| Comment(0) | 予防医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月17日

スウェーデンの牛乳有害論の追記。「偶然の可能性も排除できない」とはやはり書いていない。



前に、牛乳を多く飲むと死亡率と骨折が増えるが、発酵食品のチーズやヨーグルトを食べても有害でない、むしろ良いんじゃないの?という内容の論文を紹介した。


今回、追記。


ハーバービジネスオンラインhttp://hbol.jp

というサイトにスウェーデンの牛乳の研究の記事があった。http://hbol.jp/12531


以下引用。


 果たして、牛乳は本当に有害なのだろうか? ネットで拡散しているスウェーデンの研究結果を伝えたニュース記事のリンクは、そのようにしか思えなくなるように書かれている。しかし、元の論文によくよく目を通してみると、また違った側面が見えてきた。


 論文の原文には「Strengths and weaknesses of this study(我々の研究の強みと弱み)」と題した項で、研究結果は「reverse causation phenomenon(逆因果現象)」すなわち、「牛乳をたくさん飲んだから骨折が増えた」のではなく、「骨粗しょう症を患う人が、骨折を予防するために牛乳の摂取量を増やしたが骨折した」ことで、骨折の原因が牛乳にあるとされてしまう、原因と結果を取り違える現象が起きている可能性があることなどを明記。”今回の研究で示された牛乳の摂取量と死亡率・骨折頻度との関連性については偶然の可能性も排除できない”とし、さらなる研究の必要性も書いているのである。


 これらの記述を見れば、研究結果の報道を見て即座に「牛乳=有害無益」と決めつけるのは早計だとも判断できるだろう。


不安におもったんで、「偶然の可能性も排除できない」って箇所があるかどうか見てみたんだが、やっぱり書いてないんだぜ。それに該当するらしき文章は見つかったけど。↓


None the less, we cannot rule out the possibility that our design or analysis failed to capture a reverse causation phenomenon.


この一文を「偶然の可能性も排除できない」と解釈しているんであれば、勘違いかミスリードだな。意味は


「それにもかかわらず、我々の研究デザインおよび解析方法は、 reverse causation phenomenon (因果逆転現象)を捕捉していない可能性は、排除できない。」


という意味でしょうよ。というか、これはお作法なんでないの。この手の考察は、観察研究を行った場合の論文には、たいてい書いてあることだよ。この場合だと、牛乳が骨折の原因なんじゃなくて、骨折しやすい人が、牛乳を多く飲む傾向にあった可能性(因果逆転現象)は、研究デザイン上、どう頑張っても排除できないよ、ということ。決して、偶然の可能性は排除できない、という意味ではない。

これが、偶然の可能性は排除できないって意味なら、同様の観察研究という方法で得た結論は、全部偶然の可能性は排除できないってことになるが。んなわけあるかい。


ちなみに、因果逆転現象についても以下の反論をしている。

@一番はじめに骨折するまでの時間もデータとして取ってある。

A牛乳を飲んでいる群で、骨折していない集団の死亡率も上がっていた。

B発酵食品を多く食べた群で、骨折する可能性が下がったことが反論として上がる。

C前に骨折したか、骨折の家族歴があることが、牛乳の摂取が多いこととは関連していないことも反論にあがる(おそらく、骨折したことがあるか、家族が骨折したことがある人が、牛乳をたくさん飲んでいるということもなかった、ということ)。

D観察期間中に、観察対象となった人々が、疾患の状態で、牛乳を飲む量を変えたということもなかった。


申し訳ないが、この一文はどうしても分からなかった。

Furthermore,prospective designs are more likely to generate non-differential misclassification and thus attenuate the evaluated association.


まあ、6個くらい反論を上げた上で、これだけの反論材料があったとしても、研究デザイン上、因果逆転現象の可能性は排除できない、としている。これが学問的な誠実さという物だろうか。


普通に読めば、著者は、研究の限界を示しながらも、牛乳は有害である可能性がある、と言っている。普通に読めばだけど。いや、普通じゃない読み方をしても、この結果は偶然の可能性もあるなんて言ってねえよ。


The results should, however, be interpreted cautiously given the observational design of our study.

「しかし、我々の研究デザインが観察研究であることを考えれば、(牛乳が有害であるという)結果については注意深く解釈されるべきである。」


とは結論のところで言っているけど、その前文でこうも言っている。

Our results may question the validity of recommendations to consume high amounts of milk to prevent fragility fractures.

(我々の結果は、脆弱性による骨折を防ぐ目的で、牛乳を多く摂取することを推奨することが正しいことか、疑問を呈することになるだろう)


とし、


although causality needs be tested using experimental study designs.

(意訳:今後は介入研究でGO!!


としている。今回の研究デザインじゃ結論はでなかったから、今度は介入研究で決着をつけてやろうじゃないか、ということ。ちなみに、これも観察研究の結びのお作法みたいなものなんじゃないの。偶然かもしれないからさらなる研究をしようという意味にとられるのは、研究チームにとっては心外の極みだろうな。


ハーバービジネスオンラインの中の人には申し訳ないけど、どういう目的でこの記事を書いたのか、私にはまるで分からない。日本語というローカル言語ということで(おそらくは)安心してるのも、インターネットの性質上、まずくないだろうか。この研究チームあるいはBritish Medical Journal から


「われわれはそんなことは言ってないんだけど!!」


とかクレームが来ても知らないよ。

posted by ペンギン太郎 at 18:59| Comment(0) | 予防医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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