2015年05月28日

ロアル・ダールの “Death of an Old Old man.” を読んだ。「彼の頭の中にはこれから始まる戦い以外には、何も無かった。」


フィクションであれノンフィクションであれ、英米圏の読み物や創作物を読んで感じるのは登場人物の行動力と勇気の賞揚である。そして、その行動力と勇気は、筆者の行動力と勇気でもある。つまりは強烈なナルシシズムなんだけど、これにあてられて劣等感を持つ日本人は、自分だけではないと想像する。

例えば、ハリー・ポッターを見よ。彼は屈しない。あきらめない。絶望的な状況でも最期まで行動する。しかも、彼にとって、勇気はごく自然に湧いてくるような、当たり前の物なのだ。

Dr.House というドラマもあるが、主人公のハウス医師だってあきらめない。最期まで行動する。患者や同僚との軋轢も恐れない。自分の身が危うい状況も恐れない。そして、一面では不愉快な程の、主人公の行動(非倫理的な場合もあるが)と勇敢さが、最終的には、患者を救う鍵になる。

日本の少年漫画にしろ成人の読み物にしろ、こういうストレートな行動力と勇気の賞揚が、まっったく無い。
なぜか。それは、創作している作者や製作者、ひいては日本人である我々には、行動力や勇気が圧倒的に足りないからだ。

というのが前振り。で本題。

ロアル・ダールの”Death of an Old Old man.”を読んだ。
前半が一人称「わたし」、後半が三人称「彼」になっている。

第二次世界大戦中の英国。主人公「わたし」は、戦闘機パイロットだ。ドイツとの戦争で、数々の修羅場をくぐり抜けてきた勇者なのだが、彼は恐れていた。背後から、ひたひたと迫ってくる「それ」、つまり死を。
4年前は、恐れていなかった。しかし、今は、恐ろしい。とてつもなく恐ろしい。

そして、戦闘機(スピットファイア)に乗って出撃した「わたし」は地上を眺めながら考える。

I don’t want to die. Oh God , I don’t want to die. I don’t want to die today anyway. And it isn’t the pain. Really it isn’t pain; I don’t mind having my leg mashed or my arm burnt off. I swear to you that I don’t mind that. But I don’t want to die.
(死にたくない。ああ神様、死にたくない。とにかく、今日は死にたくないんだ。それは痛みの問題じゃない。痛みなんかどうでもいい。脚がつぶれようが、腕が焼け落ちようが、気にするもんか。誓って言うが、そんなことはどうでもいいんだ。自分は、死にたくないんだ。)

ロアル・ダールは、戦闘機パイロットとして第二次世界大戦に従軍している。この感覚は、全くの想像で書いたものではないと思う。だとすれば、戦場で感じる現実というのは、どれだけの極限状態なのか・・・。

が、人間らしい弱さが吐露された前半部は、後半部の語り手が「わたし」から「彼」の三人称に変わることで一気に覆される。
主人公は敵ドイツ戦闘機(フォッケウルフ)に見つかってしまう。逃げ場はない。戦うしかない。この決意の瞬間、主人公は豹変するのだ。

There was no thought in his head now  save for the thought of battle. He was no longer frightened or thinking of being frightened. All that was a dream, and as as sleeper who opens his eyes in the morning and forgets his dream, so this man had seen enemy and had forgotten that he was frightened.
(彼の頭の中には今、これから始まる戦い以外には、何も無かった。彼はもう、自分が恐れていることも、恐れていると考えることもなかった。全ては夢だった。眠っている人間が、朝、眼をあけたときに見ていた夢を忘れるように。彼は、敵を見続けた。そして、恐れていたことなど忘れてしまっていた。)

彼はもう、死を恐れていなかった。頭にあるのは、これから、どうやって戦うか、と敵ドイツ戦闘機を倒すことだけである。経験と勇気とパイロットの本能で、戦闘機と一体化した主人公は、敵ドイツ戦闘機と壮絶な死闘を繰り広げる。しかし、敵は強い。とてつもなく強いのだ。そして・・・。

結末までは書かないが、本当に感嘆のため息がでる。特に

There was no thought in his head now  save for the thought of battle.
(彼の頭の中には今、これから始まる戦い以外には、何も無かった。)

の一文は凄まじい。かっこ良すぎる。こういう、ストレートな勇気、やせ我慢でも無理でも何でもない、ごく当たり前に、自然に発揮される勇気というのには本当に憧れる。

自分にもこういう勇気が欲しいと、本当に心の底から思った作品だった。
こういう感覚が、自分にとっては、英米圏の作品に触れた時に感じる劣等感なのだ。
posted by ペンギン太郎 at 23:30| Comment(0) | 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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